悪夢のあとに


 すごく悪い夢を見た。


 彼女の全てを手に入れたかった。
 だから彼女を殺そうと思って、逃げるを追い詰めて、
 僕は僕の手での頸を絞めて、息の根を止めた。


 こんな夢を見た僕は……狂っているのかもしれない。
 確かにのことを気が狂いそうになるほど愛しいと思うけれど…


 ダイゴは自分の両手を見る。



 ……この手での白い頸を絞めて殺したんだ。

 …僕の心のどこかに、
 彼女の…あの細い頸を絞めたいという欲求があるのかもしれない。

 それと…彼女はこんなに近い場所にいるじゃないか。
 どうして、遠い場所にいると思っていたんだ…?



 横を見るとすやすやと眠っている彼女は、呼吸をして、生きていた。


 試しに、の頸元へ恐る恐る片手を伸ばしてみた。
 しかし途中で手を伸ばすのをやめ、手を引いた。



 彼女を殺したいとは、…思わない。


 ……当たり前だ。何を考えていたんだ。全く…




 その時だった。

  「ん……っ…ふぁ………おはよ、………ダイゴ」


 が目を覚ました。

 僕は少し戸惑ってしまうが、挨拶を返す。


  「おはよう、。」


 僕との目が合う。

 夢の中とはいえを殺してしまったということを思い出して、
 更に複雑な気分になってしまった。


  「?何だかいつもより元気がないね。何かあった?
 怖い夢でも見たとか?でも、まあ子供じゃないんだしそんなことないか。」


 いきなり図星でびっくりする僕。

 しかし、バレていないようでスルーされた。



 それから僕はを押し倒したような体制になって話を続けた。


  「僕だって怖い夢は見るよ。」
  「へえ……どんな夢?」


 言ってもいいのだろうか。
 まあ、試しに言ってみても今日見た夢がそうだってバレないよね。



  「…が死んでしまう夢、とか」



 するとは一瞬きょとんとした顔をしたが、
 それからすぐに笑い始めた。


  「あはははは!」
  「笑うなよ」


 僕が不満気味にそういうと、


  「……今日見た夢はそういう内容だったんでしょ?」
  「!」


 君はそう言って笑った。



  「お。当たりみたいだね。
 でも、…私は死なないよ。
 それに、ダイゴが守ってくれるでしょ?」


 ………


  「…僕が殺すかもしれないよ?が愛しすぎて。」

  「それでも。」


 は僕が言った言葉に対して、すぐにそう言って答えた。




  「だから、そんな不安そうな顔しなくていいよ」




 僕の目をしっかりと見据えて。

 は優しくそう言った。




 子供みたいだと言われても仕方が無いと思うけれど、
 僕はその顔を見て、不思議な位に安心してしまった。



 …やっぱり、僕にはが必要だ。
 好きだという言葉では語りつくせないほど感情が溢れてくる。







 に傍にいて欲しい。








 そして僕はにキスをした。





 ・・・・
 夢落ちって、漫画界だとタブーらしいですよ。