デンジがまたもや突然家にやってきた。
普段どこにも行こうとしない、買い物にすら行こうとしないデンジだけど、
私の家には誘わなくてもやって来る。
ちょっと困る。けど、嬉しい。
デンジは私の部屋に入ると、適当な場所で胡坐をかき、
近くに置いていたテレビ欄を取って見ていた。
そして手で私を招いた。『隣に来い。』ということらしい。
おかしいなあ。
ここ、私の部屋なのになあ。
「はー、随分リラックスしてんのね。」
そういいながら、私はデンジの隣に座った。
「まあ、自分の部屋みたいなものだしな。」
「あー、そう。」
まあ、いつものことだ。
あ、そういえば、
「デンジ、ケーキ、あるよ。」
「食べる。」
「じゃあ、持ってくる。待ってて。」
持ってきた2つのケーキを机の上におく。
私はショートケーキを取り、デンジはチョコレートケーキを取った。
「…なあ、
思うんだが、こういう時ってやっぱり、…やるべきなのか?」
と言いながら、デンジはフォークと私を交互に見て、
「…食べさせあいっこ。」
そう言葉を結んだ。
…えっ
「馬鹿、私に聞かないでよっ」
思わぬ言葉がきたので、私は冷静に返すことができなかった。
そんな私をよそにデンジはケーキの端を一口サイズにカットし、
フォークをさした。
そして、それを私に差し向けた。
「はい、あーん。」
「えっ、やるの?ほんとにやるの??」
思わず少しパニックになりながら、
私はデンジの差し出したケーキを食べた。
「うわあ、恥ずかしい……」
食べてしまった。
…ねえ、これって、やられたらやり返すもの、だよね。普通。
………えー、恥ずかしい…!
デンジに、『はい、あーん。』って言うの?私、言うの?
一瞬で様々なことが私の頭の中を巡っていった。
「ねえ、これってやり返さなきゃいけないの?ダメ?」
「嫌ならいい。」
そういいながら、デンジは一口ケーキを食べていた。
あ、間接キスだ。
「嫌じゃないけど、はずかしいよ。」
「別に恥ずかしがらなくても。
はもっと恥ずかしいこと俺にしてるよ。例えば」
「っあー!やめてっ」
それを言われたら、元も子も無い…。
私は恥ずかしいけれど、デンジがしたように、
ケーキを一口サイズにカットしてフォークにさしてデンジに向けた。
「はい。」
「あーん。」
sweet sweet sweet
甘ったるい時間。