*設定:高校生
     026.現実虚無の続き。







  「先輩、ずっと前から好きでした。…付き合ってください。」






082.鎖




 デンジ先輩とのお付き合いが始まってから一ヶ月。
 今までデンジ先輩には彼女さんがいて、
 私なんか到底近付ける訳も無かった。


 けれど、先輩が彼女と別れたって噂で聞いたんです。


 どきどきしました。

 このチャンスを逃したら、私、きっとこれ以上近付けない。
 そう思って、居てもたってもいられなくなって、
 その噂を聞いたその日に先輩に告白しました。


 それから一ヶ月。

 デンジ先輩との交際は楽しい、とはちょっと悲しいけれど言えません。

 最初はすごく楽しかったんです。
 今まで、デンジ先輩と手をつないだりできるとは思っていなかったから。

 でも、段々分かってきたんです。

 デンジ先輩、私といるとき、ちっとも楽しそうじゃなくて、いつも遠くを見てる。
 そんな先輩を見て、言おうとした言葉を飲み込んだことは何度も。



 ああ、私の話、聞いてくれてないな。



 そんな時、私が告白したときのことをいつも思い出すんです。

 私の告白の言葉を聞いて、デンジ先輩が言った言葉を。




  「……多分俺、君に何もしてあげられない。」




 私はその言葉を聞いて、
 それでも良いです、それでも先輩の傍に居たいんです。
 そう答えました。

 それを聞いてデンジ先輩が、なら、好きにしたらいい。

 そう言って交際が始まったことを、思い出すんです。


 だから、私は何もデンジ先輩に言えない。


 私を見てって、言えない。

 笑ってって、言えない。



 私のこと、好きになってなんて言えない。



 辛いよ、先輩。