018.レモンの飴玉
※098.ノストラダムスの後日
テスト週間直前、部室の掃除をしていた。
「。」
私の憧れの人の声が背後から聞こえた。
私は振り向いて彼の立ち姿を見たと同時に、
数日前に起きた出来事について一気に思い出してしまって、少しだけ恥ずかしい、
気まずいような気持ちになってしまった。
「豪炎寺くん…」
「ゴミ出しに行くのか?」
そんな私の内心など知る由もなく、私の手元を見て彼はそう続けた。
「…うん。テスト週間始まるから。」
私も彼を見続けるのは気まずいという気持ちになったので
さっさと自分の手元に視線を戻してぱっぱと数個あるゴミ袋の口を結んで
逃げるように集積所に持っていこうとした。
…予想外に重い。
皆、ゴミ出しすぎ…
でも今はそんなことを気にしている場合ではなかった。
入口付近で立ち止まっている彼を避けて外に出ていこうとしたところ、
彼は何も言わずに無言で私が持っていたゴミ袋を取り上げた。
「え…っ」
こ、今度は一体何をするんですか…?
ドキドキと身構えていると、彼は何もせずにそのままゴミを持ってスタスタと前に歩いていった。
「行くんだろ、集積所。」
「あ、ああ、うん…」
もしかして、気を使ってくれた?
こうして二人で集積所に向かうことになり、は豪炎寺の後ろを歩いた。
どうしよう
どうしよう
私、今、物凄く気まずい!
二人きりなのは嬉しいけど、恥ずかしいよ…!
ふと、は前を歩く豪炎寺の背中を見つめると、
背は高いし、身体の作りも全体的に角張っているし、
やっぱり男の子なんだなあ、と思った。
…私、何、見てるんだろ…
更に恥ずかしくなった。
その時、急に豪炎寺は立ち止り、振り向いた。
目線が合う。
慌てて視線を逸らした。
のその行動が何か気にかかったのだろうか
豪炎寺はこう言った。
「…どうした、。
さっきからちょっと様子がおかしくないか。
さっきもそうだったが、今もワザと目線逸らしたろ。」
「そんなことないよ。」
は咄嗟にそう返した。
豪炎寺はそのまま何も言わず元のように歩き始めた。
「…」
まあ、いいや。
何も考えずに今は二人でいるこの機会を楽しむべきだろう。
それから集積所に着くまで、二人は無言で、話すことはなかった。
集積所からの帰り道、
今度は豪炎寺くんの横を歩いた。
「…ありがとう……修也。」
「……?」
豪炎寺くんは目を丸くして私の顔を見る。
あ、やっぱりまずかったのかな。
少し心臓の鼓動が速くなった。
「何てね、
ごめんやっぱり嫌だった?」
「…別に。」
いつもと変わらない様子で彼はそう言った。
…正式にOKして貰えた。
私は、跳び跳ねたいほど嬉しかった。
「…ありがとうね、
あ、そうだ。」
「?」
私はポケットから飴を取り出した。
「はい。」
そう言って豪炎寺くんの手に飴を渡した。
「サンキュ。」
と修也は封を切って飴を取り出した。
黄色いレモン味の飴だ。
口に含んで、その通り。
ああ、甘酸っぱい。
恋の味がした。