修練の時間になった。
 いつもどおり、修行をしているが…


  「……」


 どうやら、まだあのことを怒っているようだ。
 話を聞いてくれない。


  「何時まで怒っているんだ?」
  「…」
  「ルカリオ」
  「…」


 参ったな…
 そんなに怒るとは思っていなかった。


 ……

  「よし、ルカリオ。今日は特別な修行を行う。」
  「…」
  「付いて来い。」



 向かったのは、川。

  「…」
  「魚の動きを感じて釣るんだ。」

 針に餌をつけながら、そう言った。

  「…」
 
 アーロンは持ってきた竿を振って、ぽちゃん、と水の中に針を落とす。
 するとすぐに反応があった。
 吊り上げると、針に銀鱗を煌かせる小さな魚が食いついていた。

  「こんな感じにな。」

 釣った魚を川に帰す。
 あまり大きくなかったからだ。

  「魚の波動を感じて、心を読み、釣る。ルカリオ、出来るな?」
 
 ルカリオに竿を渡す。

  「…」
  「ちなみに今日の夕食だ。しっかり釣ること。」

 ルカリオは、釣りを始めた。
 私もその横でもう一本持ってきた竿を振った。









 釣りを始めて、暫く経つと二人で食べるには十分な数を釣っていた。

 そろそろ、終わって食べるとするか…

  「ルカリオ、そろそろ…」
  「あ、アーロン様…!!」
  「ん、どうし──
 かなり、引いているな!大物だぞ!!」

 ルカリオだけじゃ、とても釣れそうに無い。
 逆にルカリオが釣られてしまいそうな位大きい魚のようだ。

 それに竿が、かなりしなっている。
 竿がもつか…?

 いや、考えている場合じゃない。
 ルカリオの手の上に、自分の手を重ねて竿を握る。

 ルカリオが私の顔を見る。

  「一気に引くぞ!」

 ルカリオがうなずく。


 せーの!
 そう、合図を取って一気に引いた。





 …が。





  「うわっ!!」

 二人は、川の中に落ちた。
 握っていた竿は折れていた。

 お互い顔を見合すと自然と笑みが漏れていた。

  「はは、ずぶ濡れだな。」
  「はい。」


 笑ってそういうと、ルカリオも笑っていた。



続き